2012年9月10日月曜日

葛根湯でドーピング?

Urinary elimination of ephedrines following administration of the traditional chinese medicine preparation Kakkon-to.
K.H. Chan, R.N. Pan, M.C. Hsu, K.F. Hsu
J. Anal. Toxicol. 2008;32;763-767
PMID:19021932


題名:葛根湯投与後の尿中へのエフェドリン排泄


葛根湯は、風邪に対する伝統的な漢方の一つである。麻黄は葛根湯の成分の一つである。麻黄の主要な成分であるエフェドリンは、WADAリストに記載のある禁止物質である。本研究の目的は、葛根湯投与後の尿中へのエフェドリンの排泄を検討し、エフェドリンテストの結果として陽性になるのかどうかを決定することである。6人の健常ボランティアに2.5g葛根湯抽出顆粒を単回投与した。尿中エフェドリン濃度は、HPLCにより決定した。エフェドリンとノルエフェドリンは単回の葛根湯投与により尿中へ排泄されていた。しかしながら、尿中へ排泄されたエフェドリン類で最も多かったものはエフェドリンであり、そのピーク濃度は4.35+/-1.82 microg/mL(mean+/-SD)であった。この濃度はWADAに規定されている閾値(10 microg/mL)よりも低いものであった。エフェドリン、ノルエフェドリン、プソイドエフェドリン、ノルプソイドエフェドリンの尿排泄半減期は、5.2+/-1.2、4.2+/-1.3、4.2+/-0.9、6.5+/-2.8時間であった。以上より、本研究は、葛根湯の単回投与後の尿ではWADAのドーピング規定に抵触しないだろうと結論づけた。しかし、一日三回三日間の投与での尿中エフェドリンでは陽性であった。葛根湯を単回投与以上に服用する場合にはアスリートは注意をしなければならない。


2012年8月8日水曜日

小青竜湯でドーピング?

Elimination of ephedrines in urine following administration of a Sho-seiryu-to preparation.
K.H. Chan, M.C. Hsu, F.A. Chen, K.F. Hsu
J. Anal. Toxicol. 2009;33;162-166.
PMID:19371465

題名:小青竜湯投与後の尿中へのエフェドリンの排泄

小青竜湯は、風邪に用いる伝統的な漢方薬の中でもよく用いられるものの一つである。小青竜湯の成分の一つに麻黄がある。麻黄の主要な成分であるエフェドリンは、WADAリストにより禁止されている。本研究の目的は、小青竜湯服用後の尿中エフェドリンの排泄を検討し、尿のエフェドリン試験が陽性になるかどうかを検出することである。6人のボランティアに小青竜湯2.5gを単回投与した。尿は48時間まで採取した。尿中エフェドリンは、HPLCにより検出し、排泄の半減期を推定した。結果として、エフェドリンとノルプソイドエフェドリン(これもWADAで禁止されている)は、小青竜湯の単回投与後の尿中に検出された。エフェドリンのピーク濃度は、3.88 +/- 1.87 microg/mL (平均+/- SD)であり、これはWADAの閾値(10 microg/mL)を下回っていた。推定された排泄の半減期はそれぞれ以下のとおりだった。エフェドリン, 5.3 +/- 1.2hr; プソイドエフェドリン, 4.9 +/- 0.9hr ;ノルプソイドエフェドリン, 5.4 +/- 1.8hr。以上より、単回の小青竜湯の服用において、尿サンプルではアンチ・ドーピングの規定に抵触しないと結論付けられた。しかしながら、一日3回、三日間の反復投与では、尿中エフェドリンは13.7 microg/mLとなり、陽性となることも明らかとなった。アスリートは、小青竜湯を反復投与する場合は、注意しなければならない。


2012年8月7日火曜日

ベータ2アゴニストの尿中排泄量とWADAコードでの閾値の関係

Formoterol concentrations in blood and urine: The WADA 2012 regulations.
Eibye K, Elers J, Pedersen L, Henninge J, Hemmersbach P, Dalhoff K, Backer V.
Med. Sci. Sports Exerc. 2012;45;16-22.
PMID:22843108

題名:血中および尿中のホルモテロール濃度:2012WADA規約との関連

目的
我々は、健常者および喘息患者における18microgramの吸入ホルモテロールの単回投与後の尿中・血中ホルモテロール濃度と、健常者における反復投与後の尿中・血中ホルモテロール濃度を検討した。結果は、WADA2012に記載されているホルモテロールの閾値との比較で評価した。

方法
オープンラベルのクロスオーバー試験にて行った。習慣的にbeta2アゴニストを使用している10人の喘息患者と、beta2アゴニストを使用したことがない10人の健常者に18 microgramのホルモテロールを単回投与した。さらに、10人の健常者で、18 microgramのホルモテロール吸入をトータル72 microgramになるまで二時間おきに投与した(この投与量は、WADA2012で規定されている最大投与量の2倍である)。血液サンプルは、ベースライン・投与後30分, 1, 2, 3, 4, 6時間に採取された。尿サンプルは、ベースライン・0-4時間・4-8時間・8-12時間と4時間の蓄尿として採取した。

結果
比重で補正したホルモテロールの尿中濃度の中央値は、単回投与の場合0-4時間でピークで、喘息患者で7.4 ng/mL、健常者で7.9 ng/mLであった。72 microgramになるまで二時間おきに18 microgramづつ投与をした反復投与の場合は、4-8時間でピークとなり、健常者では16.8 microgram/mLが最大値であった。トータル72 microgramのホルモテロール吸入を投与したあとの最大濃度は25.6microgram/mLであった。

結論
ホルモテロール吸入後の尿中・血中濃度に関して、喘息患者と健常者では有意な差はみられなかった。どちらのグループにおいても、非常に大きな個人差がみられた。我々のデータは、WADA2012で規定されている30 ng/mLというホルモテロールの尿中濃度の閾値が妥当であることを支持している。


2012年8月2日木曜日

長距離移動で、生体パスポートが変わるのか?

The impact of long-haul air travel on variables of the athlete's biological passport.
Schumacher YO, Klodt F, Nonis D, Pottgiesser T, Alsayrafi M, Bourdon PC, Voss SC
Department of sports medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany.
Int J Lab Hematol. 2012 e-pub
PMID: 22805050

題名:長距離の飛行機移動における、アスリートバイオロジカルパスポートの変化

はじめに
飛行機移動中におきる血液凝集能に関して、脱水や体液移動や体液変化は血液学的な変化を起こしうる。アスリートは、これらの効果がスポーツのパフォーマンスを損なったり、栓塞症のリスクを上昇させたり、血液検査が異常値になって、アンチ・ドーピングにおいて血液検査をモニタリングしている「Athlete's biological passport (ABP)」で間違えてドーピングと判定されるかもしれないことを心配している。本研究の目的は、アスリートが長距離の飛行機移動する前後にABPが変動するのかを検討することである。

方法
15人のアスリートを対象として、8時間の飛行機移動の前後の朝にABP血液サンプルの提供を受けた。さらに飛行機移動の3日後、6日後の朝にも血液サンプルの提供を受けた。12人の飛行機移動をしていない方々にもコントロールとして、サンプルの提供を受けた。

結果
ヘモグロビン値は、アスリート群で飛行機移動後よりも前のほうが高かった(+0.5 g/dL, P-0.038)。似た傾向が飛行機移動後3日間でも確認された。コントロール群では変化がなかった。赤血球%は、アスリート群もコントロール群も変化が見られなかった。

結論
検出された変化は、日中の通常の変動内である。そのため、飛行機移動は血液検査に影響を与えず、血液ドーピングとして間違えられないだろうと考えられる。


2012年6月18日月曜日

アスリートの高血圧治療について

Hypertension update and cardiovascular risk reduction in physically active individuals and athletes.
Phys Sportsmed. 2010 Apr;38(1):11-20.
Oliveira LP, Lawless CE.
Department of Internal Medicine, Cleveland Clinic Foundation, Cleveland, OH, USA.
PMID: 20424397

を主な題材とした。

ざっくりと気になったところをメモ。

physically activeな人間では、一次性二次性高血圧の頻度は一般の頻度の50%程度低いという報告がある。

・フィンランドでのアスリートの高血圧調査では、持久性のスポーツアスリートでは一般に比べて低いが、パワースポーツでは低くなかった。つまり、スポーツ種によって高血圧患者の頻度が異なっているのかもしれない。

・本態性高血圧は、高血圧患者の95%を占める。残りの5%は二次性高血圧であり、この頻度はスポーツ選手と一般のpopulationで変わらない。

・アスリートは、冠動脈の奇形や心筋肥大・催不整脈性の右心室奇形などの検出ができない先天性の心臓奇形のために突然死のリスクがある。これらの病態は高血圧を引き起こすものではないが、高血圧を併発することによって突然死のリスクは増加しうる。

・高血圧の治療のゴールは、アテローム性疾患の予防である。

・高血圧治療の際、非薬物治療は忘れてはならない。

フルーツ・野菜を多く、脂肪を少なくする食事で血圧は、8-14mmHg低下(Dietary Approaches to Stop Hypertension, DASH diet)。

BMI18.5-24.9に保持すると、5-20 mmHg/10 kg weight loss血圧低下。

・利尿薬は、低カリウム血症・低ナトリウム血症などの電解質異常や脱水をもたらし、WADAで禁止されているので使用は限定的である。

physically activeな人では、高血糖や脂質異常症などの代謝異常を引き起こす心配があるが、ALLHAT studySHEP studyではmajor outcomeで有意差はない。

LIFE studyでは、アテノロールに比べてロサルタンは虚血性疾患のリスクを低下させた。

・高血圧アスリートにおけるファーストチョイスはACEIARBだろう。両剤はエネルギー代謝に影響せず、VO2maxを抑制しない。

CCBもエネルギー代謝に影響せずVO2maxを抑制しないが、乳酸蓄積をひきおこす可能性が指摘されている。しかし、first-lineの選択肢である。

beta-blockerは、運動に対する影響やWADAの禁止リストにはいっていることから、first-lineの治療薬ではない。しかし、冠動脈疾患や心不全の場合、第一選択である。

ONTARGET(The Ongoing Telmisartan Alone and in Combination with Ramipril Global Endopoint Trial)で、テルミサルタン単独とラミプリル単独で同等、両剤併用でbenefitは増えないが高カリウム血症・低血圧・腎不全などのリスクが上昇したので、ARBACEIはどちらか単独で用いたほうがよいのかもしれない。現実的にはARBCCBの併用か。

・ジルチアゼムは心拍数を抑えるが、運動パフォーマンスに影響を与えない。

beta-blockerは、最大運動量を低下させる。

エルゴメーターで、アテノロールは運動量を低下させるが、cilazaprilは筋肉を低下させない。

トレッドミルで、アテノロールは運動時間を低下させるがエナラプリルは低下させない。

クロニジンは、運動時のSBPを過剰に上昇させる。

・ニフェジピンとエナラプリルは、運動時の血行動態を変えない。

・ジルチアゼムは運動パフォーマンスに影響しない。

ARBはプラセボに比較して運動容量を改善した。

・エナラプリルとベラパミルは運動容量を減少させなかった。

・エナラプリルとベラパミルは代謝を変化させなかった。

ACEIARBの併用は、VO2maxの増加・ノルエピネフリン、アルドステロンの減少などいいこともあるが、ONTARGETでの両剤併用による副作用リスク上昇を考えると、使用しづらい。

・非ジヒドロピリジン系CCBは心拍を落とすので、使いづらいといえば使いづらいが、上記の報告ではジルチアゼムが運動容量に影響を与えないので第二選択。


まとめ

・筆者らのストラテジーは、以下のとおり。

2012年6月5日火曜日

ドーピングのニアミス例についてのレビュー

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/131/12/131_12_1751/_pdf

結局のところ、ドーピングの予防とTUEが最重要なのかなぁと思いました。このような事例集がはやくできればいいなぁ。

2012年5月26日土曜日

カフェインは持久力を増やすのか?

The effect of different dosages of caffeine on endurance performance time.
Int J Sports Med. 1995;16(4);225-30.
Pasman WJ, van Baak MA, Jeukendrup AE, de Haan A.
Department of Human Biology, University of Limburg, Maastricht, The Netherlands.
PMID: 7657415


題名:耐久力に対するカフェイン摂取の効果

耐久性が求められる競技におけるカフェイン(0, 5, 9, 13 mg/kg body weight)の効果を検討した。9人の良く訓練された自転車競技者(VO2max 65.1 ± 2.6 ml/kg/min)が本研究に参加した。カフェインカプセルをランダムな順番でダブルブラインドで投与するクロスオーバー試験である。被験者は、1時間前にカプセルを経口投与され、電磁気的にギアを重くしたエルゴメーターで80%のWmaxになるまで自転車を漕いだ。運動テストの前後と最中で採血し、血液サンプルを得た。すべてのカフェイン投与においてプラセボに比べて、耐久力の増加がみられた(カフェイン0つまりプラセボ、47±13秒; カフェイン5、58±11秒;カフェイン9、59±12秒;カフェイン13、58±12秒)。3つのカフェイン投与群では有意差がなく、カフェインによるdose-dependency(投与量依存性)は見られなかった。プラセボに比べカフェイン投与群では、遊離脂肪酸とグリセロールの血中濃度が増加していた。運動テスト後の尿中カフェイン濃度は、5 mg投与で4.8±1.8 micrograms/ml、9 mg投与で8.9 micrograms/ml、13 mg投与で14.9 micrograms/mlであった。5 mg投与群のみ、国際オリンピック委員会で定められている尿中カフェイン濃度12 micrgrams/mlの基準を全員が下回っていた。以上より、カフェインは耐久力を上昇させることにより、運動能力を向上させると結論される。本研究で検討されたカフェイン投与量内では、カフェイン投与量と耐久力には相関が見られなかった。


2012年5月23日水曜日

ベータ遮断薬がピストル射撃でドーピングの理由とは?

beta-Blockade used in precision sports: effect on pistol shooting performance.
J Appl Physiol. 1986 Aug;61(2):417-20.
Kruse P, Ladefoged J, Nielsen U, Paulev PE, Sørensen JP.
PMID: 2875053 

題名:正確性が必要なスポーツにおけるbeta遮断:ピストル射撃

25m スタンダードピストルにおける33人の射手による二重盲検クロスオーバー試験で、beta1受容体遮断薬であるメトプロロールとプラセボを比較した。メトプロロールは、プラセボと比較して明らかにピストル射撃の成績を改善した。射撃成績は、(例えば600ポイントから実際に得た点数を引いたもので換算すると)平均13.4%(S.E. 4%, 2P<0.002)改善した。もっとも技術の高い競技者が、最も明瞭にメトプロロールによる成績改善効果が出現した。射撃成績の改善と心血管変数(心拍や収縮期血圧)の変化には、相関が見られなかった。また、射撃成績の改善は最大酸素摂取量とも相関が見られなかった。射撃成績の改善は、メトプロロールの手の振戦に対する抑制作用によるものである。感情によって心拍や収縮期血圧が上昇するのは、beta1受容体を介した現象のように思われる。


2012年5月20日日曜日

同化男性ホルモンの使用と心不全の頻度の関係

Long Term Anabolic-Androgenic Steroid Use is Associated with Left Ventricular 
Dysfunction
Circ Heart Fail. 2010 Jul;3(4):472-6. Epub 2010 Apr 27.
Baggish AL, Weiner RB, Kanayama G, Hudson JI, Picard MH, Hutter AM Jr, Pope HG Jr.
Division of Cardiology, Massachusetts General Hospital, and Department of Medicine, Harvard Medical School, Boston, Mass 02114, USA. 

PMID:
 20424234






題名:長期間の同化男性ホルモン(anabolic androgenic steroid, AAS)の使用は、左心室不全と関連する。



背景:不正なAASの使用が広がりをみせているが、長期間のAASの使用による心臓への
効果はよくわかっていない。我々は、AASを長期使用しているウエイトリフティングのアスリートと
そうではないが似たような特性のアスリートの心臓のパラメーターを比較した。

方法と結果:我々は、AASユーザー(12人)と非ユーザー(7人)の左室駆出率と局所収縮能、
拡張機能指標を評価するために、二次元組織ドプラー法とスペックルトラッキングエコーを
実施した。以下の数字は、平均、[1/4分位数、3/4分位数]を表している。AASユーザーは、
累積で平均468週[169週, 520週]の間AASを使用していた。この集団は、年齢、ウエイト
リフティングの競技経験期間、現在のウエイトトレーニングの強度において、有意差は
みられなかった。左室の構造パラメーターは、両群において有意差はなかった。しかし、
AASユーザーは、左室駆出率(50.6%[48.4%, 53.6%] vs59.1%[58.0%, 61.7%]、p=0.003)、
長軸方向のストレイン(16.9%[14.0%, 19.0%] vs 21.0%[20.2%, 22.9%]、p=0.004)、
短軸の中心から放射方向へのストレイン(38.3%[28.5%, 43.7%] vs 50.1%[44.3%, 61.8%]、
p=0.02)において、有意に悪化していた。AASユーザー12人のうち10人は左室駆出率が、
通常の>55%という値を下回っていた。AASユーザーは、early peak tissue velocity
(7.4 cm/s[6.8 cm/s, 7.9 cm/s] vs 9.9 cm/s[8.3 cm/s, 10.5 cm/s]、p=0.005)と
early-to-late拡張期充填率(0.93[6.8, 7.9] vs 1.80[1.48, 2.00]、p=0.003)で悪化していることより、
非ユーザーに比べて拡張能も悪化してることが明らかとなった。

結論:長期にAASを使用している人の心機能障害は、これまでに報告されてきてるよりも
厳しいものであり、心不全のリスクを上昇させるのに充分かもしれない。


2012年5月16日水曜日

同化男性ステロイドの使用実態 in USA

Anabolic androgenic steroids: a survey of 500 users.
Med Sci Sports Exerc. 2006 Apr;38(4):644-51.
Parkinson AB, Evans NA.
Department of Orthopaedic Surgery, Harbor-UCLA Medical Center, Torrance, CA 90007, USA.

PMID:
 16679978




題名:同化男性ステロイド(AAS):500人のユーザーの調査

目的:筋肉の大きさや強さを強化する同化男性ステロイド(Anabolic androgenic steroids, AAS)を
使用することが蔓延している。治療目的外で競技のパフォーマンスを向上させたり身体的な
見栄えを改善するためのAASの服用状況については、よくわかっていない。
本研究の目的は、AASユーザーの薬剤の服用状況の現況を調査することである。

方法:AASユーザーのなかで有名なインターネットウェブの掲示板に、匿名で自己記載の質問を
ポストした。

結果:調査に参加した500人のAASユーザーのうち、78.4%(392/50)が非競技のボディビルダーや
非アスリートであった。59.6% (298/500)は、週に1000 mgのテストステロンかそれと同等品を
服用していた。AASユーザーのほとんど(99.2%, 496/500)は、AAS自己注射であった。
13% (65/500)は、注射針の再利用・注射針のシェア・複数回分の薬剤が入っているバイアルを
他人と共有するなどの危険な注射方法を行なっていた。それに加えて、25%のユーザーは
同化効果を期待して成長ホルモンやインスリンなども使用していた。
また、99.2% (496/500)のユーザーは、AAS使用による副作用と思われる影響もでていた。

結論:この調査で、治療目的外でのAAS、の使用に関して幾つかの傾向を明らかにした。
おおむね5人に4人の割合でAASユーザーは非アスリートであり、美容のために薬剤を
服用していた。本研究サンプルのAASユーザーはかつて報告されていた調査での量に
くらべて多くの量を服用していた。つまり、研究参加者の半分以上が週に1000 mg以上の
AASを使用していた。ステロイドユーザーのほとんどが、AASを自己筋肉内注射で
使用しており、10人に約1人の割合で危険な注射方法を実行していた。95%以上の
AASユーザーで多剤併用が確認され、4人に1人は成長ホルモンやインスリンを
使用していた。AAS使用者のほぼ100%が、副作用と思われる影響をうけていた。


2012年5月15日火曜日

同化男性ステロイドを使用しているヒトとはどんな人? in USA

The Anabolic 500 survey: characteristics of male users versus nonusers of anabolic-androgenic steroids for strength training.
Pharmacotherapy. 2011 Aug;31(8):757-66.
Ip EJ, Barnett MJ, Tenerowicz MJ, Perry PJ.
Department of Pharmacy Practice, Touro University College of Pharmacy, Vallejo, California 94592, USA. 
PMID: 21923602

題名:筋力トレーニングをしている男性における同化男性ステロイド(anabolic-androgenic steroids, AAS)使用者および非使用者の特性

研究の目的:
筋力トレーニングをしている男性のうち、AASを使用している人と使用していない人の2つのグループの旺盛を比較する。

研究デザイン:
横断的な調査であるAnabolic500からのデータの解析である。

参加者:
2009年2月19日から6月30日の間にオンライン調査を完了した、506人のAASユーザー(自己申告、平均年齢、29.3歳)と771人の非ユーザー(自己申告、平均年齢、25.2歳)。

結果:
参加者は、38個のフィットネス、ボディービルディング、ウエイトリフティング、ステロイドのウェブサイトのインターネット掲示板からリクルートされた。参加者は、オンラインでインフォームドコンセントをおこない、Anabolic 500(99項目のウェブアンケート調査)を完了した。データは、統計的に処理され、内容は下記の項目に及んだ。
「・AASの使用・他のパフォーマンスを向上させる薬剤・アルコールや不正な薬剤の使用・これらの薬剤の依存症・ほかの"Diagnostic ans Statistical Manual of Mental Disorder's, Forth Edition"の診断の有無・性的、身体的虐待。」
AASユーザーのほとんど(70.4%)は娯楽的に運動をしており、平均11.1種のパフォーマンスを向上させる薬剤を日常的に使用していると報告した。AAS非ユーザーと異なり、AASユーザーはこれらの薬剤への依存症(23.4% vs 11.2%, p<0.001)に適合しそうであり、不安障害(10.6% vs 6.1%, p=0.010)や過去12ヶ月のコカインの使用(11.3% vs 4.7%, p<0.001)、性的虐待の履歴(6.1% vs 2.7%, p=0.005)でも有意に多かった。

結論:
本研究におけるほとんどのAASユーザーは、多剤を併用して常用しており娯楽的に運動をしていた。AASユーザーは、AAS非ユーザーに比べて、薬剤への依存症や不安障害、最近のコカイン使用、性的虐待の履歴などが多かった。本研究において明らかにされた情報は、臨床家や研究者たちがAAS乱用への適切な介入をするストラテジーを進めていくのに有用かもしれない。


2012年5月13日日曜日

ARBは代謝調節薬としてドーピング違反になるのか?

Telmisartan as metabolic modulator: a new perspective in sports doping?
J Strength Cond Res. 2012 Mar;26(3):608-10.
Sanchis-Gomar F, Lippi G.
Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Valencia, Research Foundation of the University Clinic Hospital of Valencia/INCLIVA, Valencia, Spain.
PMID:22130396




題名:代謝調節薬としてのテルミサルタン:スポーツドーピングにおける新しい分野になるか?

WADAは、2012年禁止リストにおいて、いくつかの変更を施した。禁止リストの新しい革新的な変更として、5-aminoimidazole-4-carboxamide-1-β-D-ribofuranoside (peroxisome proliferator-activated receptor-δ [PPAR-δ]-5' adenosine monophosphate-activated protein kinase [AMPK] アゴニスト) とGW1516 (PPAR-δ-アゴニスト)が、2012年禁止リストでは遺伝子ドーピング物質としてではなく、“Hormone and metabolic modulators”のmetabolic modulatorとしてカテゴライズされたことが挙げられる。これは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるテルミサルタンにも当てはまるかもしれない。最近、テルミサルタンが上記に類似の生化学的・代謝学的変化(例えば、ミトコンドリア生合成や筋肉繊維型の変化)を誘導する可能性が示された。我々は、テルミサルタンのようなmetabolic modulatorの乱用がスポーツ界において現実的な脅威となっていくと推測しており、そのためこの問題はアンチドーピングにおける重要な問題として遡上に挙げるべきであると考えている。2012WADA禁止リストは、ドーピング薬としてテルミサルタンをあげていないが、近い将来metabolic modulatorにこれを含むかどうかの議論がおこるだろう。


フィナステリドfinasterideのWADAcodeからの削除について

フィナステリドは、メルク社が開発した抗アンドロゲン薬の一つです。5alpha還元酵素を阻害することにより、テストステロンをジヒドロテストステロンへ変換するのを阻害します。本邦では、男性型脱毛症に対してプロペシアという商品名で販売されています。現在ではドーピング対象薬ではないようですが、かつては服用がドーピングにあたりました。2009年、ドーピングリストからはずれたようです。

以下はWikipediaのフィナステリドの項からの抜粋です。

2012年5月12日土曜日

尿の検査から輸血歴をあばく!

Plasticizers excreted in urine: indication of autologous blood transfusion in sports.
Transfusion. 2012;52(3):647-57. 
Monfort N, Ventura R, Platen P, Hinrichs T, Brixius K, Schänzer W, Thevis M, Geyer H, Segura J.
Bioanalysis Research Group, IMIM Hospital del Mar Research Institute, the Universitat Pompeu Fabra, Barcelona, Spain.
PMID: 21895677

題名:尿中に分泌される可塑剤:スポーツにおける自己血輸血の兆候

背景:スポーツにおける自己血輸血の誤使用は、検出することができないでいる。最近、可塑剤であるdi-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)の代謝物が、血液輸血のマーカーとして提案された。これは、血液輸血された患者でこれらの代謝物が高濃度で尿中に検出されたことに基づいている。本研究では、自己血輸血を検出することを目的として尿中のDEHP代謝物を評価した。

研究計画と方法:血液バッグを一袋分、被験者から採血した。その赤血球は異なった貯蔵期間後に自己血輸血を行った。グループ1(12人)は14日間、グループ2(13人)は、28日間の貯蔵をした。DEHPの代謝産物であるmono-(2ethylhexyl)ohthalate, mono-(2-ethyl-5-hydroxyhexyl)phthalate, mono-(2-ethyl-5-oxohexyl)phthalateの濃度を決定するために、尿サンプルは自己血輸血前と後で収集した。

結果:自己血輸血前のDEHP代謝物の濃度は、一般的な環境曝露のレベルであった。すべての被験者において、自己血輸血数時間後からすべての代謝産物において有意な増加が見られた。一日後でもまだ自己血輸血後から比較して有意に(p<0.05)高値を示した。尿の希釈度に関して、比重により標準化した。DEHP代謝産物の濃度は、赤血球の貯蔵時間が長いほうが高値を示す傾向にあった。

結論:プラスチックバッグに保存された赤血球の自己血輸血は、DEHP代謝産物の尿中濃度の急激な増加をもたらす。これによりドーピング違反を検出することができる。検出可能な期間は、おおむね2日である。本法は、尿サンプルのアンチ・ドーピング試験に適用されるようになるかもしれない。


同化男性ステロイドの使用状況 in プエルトリコ

A ten-year assessment of anabolic steroid misuse among competitive athletes in Puerto Rico.
West Indian Med J. 2011 Oct;60(5):531-5.
Acevedo P, Jorge JC, Cruz-Sánchez A, Amy E, Barreto-Estrada JL.
School of Medicine, Department of Anatomy and Neurobiology, Medical Sciences Campus, University of Puerto Rico, San Juan, Puerto Rico 00936.
PMID: 22519228 

題名:プエルトリコにおける、アスリートの同化ステロイドの誤使用の10年間調査

目的:カリブ海地方における同化男性化ステロイド(anabolic androgenic steroids; AAS)の誤使用に関して、よくわかっていない。本研究では、プエルトリコにおけるアスリートのAASの使用状況を検討した。

方法:2000-2009年の期間のスポーツ大会からランダムサンプリングされたアスリートの薬物テストの結果を解析した。ドーピング試験は、Centre for sports, health and exercise sciences (Albergue Olimpico, Sanlinas, Puert Rico)により行われた。この期間中に550人のアスリートがモニターされた。陽性の結果の場合、スポーツの種類と性別と使用されたAASの種類の情報を収集した。

結果:過去10年分でモニターされた総サンプルのうち、5.4%に不運な結果が示された。ASSの誤使用は、男性(62%)と女性(38%)の両方のアスリートに検出された。ウエイトリフティングでのAAS陽性率がもっとも高く、すべての陽性のケースのうち70%を占めた。また、stanozololが外来性アンドロゲンの誤使用でもっとも頻度が高かった(stanozololのみ、もしくは、アンドロゲンカクテルとして用いたものも含めて、60%を占めた)。内在性アンドロゲンとしてもっとも使用されていたものはテストステロンであった(すべてのケースのうち、10%を占めた)。

結論:プエルトリコでは、スポーツや性別にかかわらずAASが検出された。プエルトリコのアスリートにおけるAASの誤使用は、世界的な傾向に沿っていたが、カリブ海におけるAASの誤使用問題は緊急に対処しなければならない。


クレンブテロールの食品中への汚染

Clenbuterol - regional food contamination a possible source for inadvertent doping 
in sports.
Drug Test Anal. 2012;4:534-538.
Guddat S, Fußhöller G, Geyer H, Thomas A, Braun H, Haenelt N, Schwenke A, Klose C, Thevis M, Schänzer W.
Institute of Biochemistry and Center of Preventive Doping Research, German Sport University Cologne, Germany.



PMID:
 22447758



題名:クレンブテロールー食物汚染はスポーツにおける不注意なドーピングの原因か?





交感神経様作用と同化作用を持つクレンブテロールの誤使用は、プロスポーツ界や家畜業界で
頻繁に報告されてきている。2010年、中国の大会に参加し帰国したアスリートチームのドーピング
コントロールサンプルを2日以内に提出させたところ、すべての尿サンプルにおいて、pg/mlレベルの
低レベルクレンブテロールが検出された。これは、よく知られた問題に対しての警告を発している、
つまり、食物から予期しないクレンブテロールを摂取している可能性についてだ。中国産肉は
国際アンチ・ドーピング規則に反する物質で汚染されているかもしれないという警告は、2008年の
北京オリンピックの直前に中国から発表された。尿中にクレンブテロールが検出されうるのかを
検討するために、中国から帰国した28人のボランティアから尿サンプルを収集し研究を行った。
pg/mlという低いレベルのクレンブテロールを検出するために、specific isotope dilution 
LC-MS/MSを用いた方法を開発した。本方法は、日内変動2.9-5.5%、日間変動5.1-8.8%、
精密さ89.5-102.5%という正確さが保証されていた。クレンブテロールは、分析されたサンプル
のうち22サンプル(79%)で検出された。中国の家畜業界でクレンブテロールは公式に禁止されて
いるものの一般的な中国の食物は汚染されていることが示唆された。


遺伝子ドーピングの検査をどうするのか?

Detection of EPO gene doping in blood.

Neuberger EW, Jurkiewicz M, Moser DA, Simon P.
Drug Test Anal. 2012;4:859-569.

Source

Department of Sports Medicine, Rehabilitation and Disease Prevention, Johannes Gutenberg University Mainz, Mainz, Germany.
PMID:
 22508654

題名:エリスロポイエチン(EPO)遺伝子ドーピングの血液中からの検出

遺伝子ドーピング(遺伝子治療の乱用)は、これからスポーツ界を脅かし続けるだろう問題である。
遺伝子ドーピングは、医学研究の進展がヒトのスポーツのパフォーマンスを向上させるために乱用
され発展してきている可能性が高そうだ。本レビューでは、EPO遺伝子治療の進展とリスク、
およびEPO遺伝子ドーピングの可能性について議論する。ex vivo、in vivoでの
遺伝子治療の治験で用いられるベクターシステムを紹介する。現状では、遺伝子ドーピングの
リスクのために、EPO遺伝子ドーピングは通常用いられるEPOドーピングや血液ドーピングの
代替にはなりえそうにない。それにもかかわらず、エリートアスリートの半分くらいの選手は、
健康を犯して利益を得たいと考えているようだ。安全性が担保されない技術を使ってまでも
ということだ。許可されていなくコントロールもされていない遺伝子ドーピング技術を防止する
ためには、洗練されたドーピング検出のためのアプローチが必要である。本レビューでは、
血液を基にした直接・間接的なアプローチによるEPO遺伝子ドーピングの検出システムの
現状について紹介する。遺伝子ドーピングは原則的に検出可能なものであり、近年のDNA
を基にした検出ストラテジーは生体に組み込んだDNAを長期間にわたって検出することが出来る。


ムスクでドーピング?

伝統的なチャイニーズドラッグ(漢方など)とスポーツ薬物試験:ドーピングコントロールされた
尿サンプルにおけるMusk pod(コウノウ、香嚢)からのnatural steroidの検出
Traditional Chinese medicine and sports drug testing: identification of natural steroid administration in doping control urine samples resulting from musk (pod) extracts.
Thevis M, Schänzer W, Geyer H, Thieme D, Grosse J, Rautenberg C, Flenker U, Beuck S, Thomas A, Holland R, Dvorak J.
Br J Sports Med. 2012;47:109-114.
PMID:22554845



題名:伝統的な中国の薬とスポーツドーピング検査:尿サンプルのドーピング検査における
ムスク抽出液摂取による自然に存在するステロイドの摂取

ムスク抽出液(雄のジャッコウジカの包皮腺分泌液やそれを粉末化したものを抽出し得られる成分)の
投与は、Traditional Chinese Medicineにおいて推奨され、日本において心血管刺激や抗炎症作用、
男性ホルモン療法に利用されるものとして薬局方に記載されている。数十年に渡る検討により、
muskのnaturalな成分として、cholesterol, 5alpha-androstane-3, 17-dione, 5beta-androstane-3, 17-
dione, androsterone, etiocholanolone, epiandrosterone, 3beta-hydroxy-androst-5-en-17one, 
androst-4-ene-3, 17-dioneや尿中代謝産物の3alpha-ureido^androst-4-en-17-oneが
同定されてきている。これらは、エリートアスリートがmuskを用いた場合、ドーピングコントロールの
問題があるということを示唆している。本研究では、国際スポーツ大会レベルの5人の女性選手に
対してmusk抽出液を用いた場合のスポーツ薬物試験への影響を検討した。通常行うような
isotope-ratio mass spectrometryによる結果を得た。アスリートのメディカルアドバイザーは、
Traditional Chinese Medicineに基づいたmusk podの処方を許可し、アンチ・ドーピング規則に
違反するかどうかを解明するためにmusk podを提供した。ステロイドプロファイル、
isotope-ratio mass spectrometryの結果、文献調査、動物園にいるジャッコウジカから得られた
muskサンプルの調査の結果、musk podを使用することによってすべてのケースにおいて、
禁止薬物であるAAS(anabolic androgenic steroids)が投与されたのと同様に、ドーピング規則に
違反していることが示された。


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このブログは、興味にそって論文の抄録を和訳してみたり、気になった報告を紹介しているだけです。おまけに、和訳も結構適当です。
このブログを信じてこうむった不利益には、なにも責任を持ちませんので、自己責任で読んでください。