2013年10月14日月曜日

beta2アゴニストのドーピング薬としての概要

beta2アゴニスト、つまりbeta2受容体作動薬はドーピングの禁止リストに記載されている薬剤です。つまり、この薬を使用するとドーピング違反となります。しかも、競技外時も常にドーピング検査対象です。ただし、薬剤によっては使用可能な場合もあるので、確認が必要です。

beta2アゴニストは、臨床的には喘息によく使われます。
投与してからの作用持続時間によって、長時間作用型はLABA(Long-acting beta agonist)、短時間作用型はSABA(Short-acting beta agonist)などと分類されています。それぞれの喘息治療における立ち位置は別に記載することとして、今回はドーピング薬としてのbeta2アゴニストについて解説します。



スポーツと関係する可能性のあるbeta2アゴニストの薬理作用

①気管支拡張作用

beta2アゴニストは、気管支のbeta2受容体を刺激することによって気管支を拡張する作用があります。つまり、気管支拡張により呼吸しやすくなるという作用があるので、この作用でドーピング違反かと思われがちですが、おそらく違うと考えられます。

なぜならば、この作用のみでドーピング違反とするならば、競技外検査対象薬ではなく、競技大会時の検査のみで対応できるからです。

さらに近年、beta2アゴニストの投与による呼吸機能増強が、スポーツのパフォーマンスに影響を与えないという結果が続々と報告されてきています。

②同化作用

同化作用とは、体を構成する組織をより増強する代謝作用と考えるといいでしょう。

この作用が強いbeta2アゴニストで有名なものが、クレンブテロールです。このクレンブテロールはLABAに分類されます。
この薬剤は日本をはじめ、ドイツやイタリア、スペインなどの国々でヒトの喘息治療薬として承認されていますが、調べた限りUKやUSAでは喘息治療薬としての承認はないようです。また、馬の呼吸器疾患などにも用いられることがあるそうです。つまり、臨床的には喘息治療薬として用いられています。

ただし、この強い同化作用のためにいろいろと厄介なことにも巻き込まれている薬です。
例えば、中国やメキシコなどでは、食肉動物の生育を早めるために餌に混ぜて食べさせていたりしているようです。もちろんこれは国際法上の違反になります。

このクレンブテロール、ヒトへの治療域は20-30 microg/day程度です。このぐらいの投与量では同化作用は見られません。100-140 microg/dayくらいの高用量投与ではじめて同化作用が見えてくるようです。

ラットにて二週間の投与で10-12%の筋肉量の増大が見られたとの報告があります。これは筋肉内のタンパク質合成の促進、アミノ酸分解の抑制の結果であるそうです。
Multiple actions of beta-adrenergic agonists on skeletal muscle and adipose tissue.
Biochem. J. 1989; 261: 1-10.
一方、サルブタモールは筋肉のタンパク質量に影響を与えないという結果もあります。

このbeta2アゴニストによる筋肉内のタンパク質合成の促進作用のメカニズムは複雑なようです。すくなくともインスリンやテストステロンなどの影響を介しているわけではなく、直接的にbeta2受容体を介した作用であることは確かであるそうです。

以上より、beta2アゴニストは、肝臓ではグリコーゲン分解など、どちらかというと生体内物質の分解を促進するイメージですが、骨格筋においてはタンパク質合成を促進させて筋肉量を増やすというちょっとかわった作用をもっているということでした。

そして、この作用は長時間作用型の薬剤であるクレンブテロールでとても強くでてくるということです。短時間型薬剤ではさほど強くないという話もあり、ここらへんの結果が近年のbeta2アゴニストの規制緩和につながっていると考えられます。

0 件のコメント:

コメントを投稿