2013年10月16日水曜日

デスモプレシンで血漿希釈!?デスモプレシンの隠蔽薬としての顔

Desmopressin and hemodilution: implications in doping
F. Sanchis-Gomar, V.E. Martinez-Bello, A.L. Nascimento, C. Perez-Quilis, J.L. Garcia-Gimenez, J. Vina, M.C. Gomez-Cabrera
Int. J. Sports. Med. 2010; 31: 5-9.
PMID: 19885778

題名:デスモプレシンと血漿希釈:ドーピングへの関与

スポーツにおいて血液ドーピングは物理的なパフォーマンスを上昇させる。これが、アンチ・ドーピング機構が選手に血液検査をする理由である。血漿増量剤は、アンチ・ドーピング規定に抵触するようなことを行った場合の血液学的検査値の人工的な上昇を抑制させることにより、数値をごまかすということで禁止リストに加えられている。

本研究の目的はデスモプレシンが誘導する血漿希釈が血液ドーピングを検出する際に使われる血液学的検査値の濃度を変えるかどうかを検討することである。

本研究は、intra-subject crossover studyとして設計された。

静脈血液サンプルを8人のphysically activeな男性から採取した。

第一回目の採取では、1.5 Lのミネラルウォーターと4.3 microg/kgのデスモプレシンの投与を行った。第二回目の採取では、1/5Lのミネラルウォーターのみの投与を行った。

ヘマトクリット値やヘモグロビン、赤血球数、OFF Hrスコア、グルコース、アルブミン、クレアチニン、総タンパク質を検討した。デスモプレシン投与後では、ヘマトクリット値、ヘモグロビン値、OFF Hrスコアにおいて有意に減少していた。また、グルコース、アルブミン、クレアチニン、総タンパク質では顕著な減少が見られた。しかしながら、本ケースではすべての値が生理的の下限よりもさらに下の値を示した。デスモプレシンの投与は血漿希釈に対して極めて効果的であった。この化合物をWADAの禁止リストへ入れるべきであると考えている。


(感想)

現在、デスモプレシンはWADAの禁止リストに入っていますが、当時はまだ禁止リストにはいっていませんでした。おそらくデスモプレシンのWADA規定での禁止に一役買った論文であろうと推察します。

自己血輸血などによって赤血球を増やそうとすると、血液ドーピング検査でヘマトクリットなどいろいろな検査で引っかかってしまいます。そこで、デスモプレシンなどの血漿増量剤を予め投与しておくことでこれらの値を下げておきましょう、つまり、血液ドーピングしていてもそれをばれないようにしてしまいましょうという考えが生まれます。

本当にデスモプレシンでそこまで血漿増量作用があるのか?ということで検討した研究です。

デスモプレシンは、バソプレシンV2受容体に選択性を示すアゴニストです。生体内にはバソプレシン受容体としてV1受容体とV2受容体が存在します。V1受容体は主に血管平滑筋などに存在し、刺激により血管収縮が起こります。また、V2受容体は主に腎臓の集合管に存在し、刺激によりアクアポリンを介した水の再吸収が起こります。トータルとして、バソプレシン刺激により血圧が上昇する方向に動きます。

デスモプレシンはV2受容体選択的に刺激することにより、水の再吸収を増加させ、結果として血漿を増加させる働きがあります。そのため、尿崩症や夜尿症に用いられることがあります。
経口剤の場合、「1日一回就寝前に120 microgから投与し、効果不十分な場合には1日一回就寝前240 microgまで」ですので、4.3 microg/kgは、50kg成人で215 microgで、多少多いが臨床容量内と考えられます。

血漿増量作用により、血中に存在するあらゆるものの濃度が減少します。物の量は変わらず、溶媒が増えれば、濃度がさがるわけです。




0 件のコメント:

コメントを投稿